眩暈SIRENに見る新しいラウド・バンドのカタチ

なんか未だにバンドサウンドにおける「ベース」の重要性に気づいていない輩が多いらしい。
特に70年代の「3大ギタリスト」や80年代の「スーパーギタリスト」旋風を聴いて育った高齢のロックファンはとかくベースを軽視しがちで、ベースと言えば「ギターの下手なやつが押し付けられてイヤイヤやるパート」くらいの認識でいるんじゃないだろうか?
ギターは音的にもボーカルと並んでフロントに出るパートなので認識もされやすく、一昔前ならギターの良し悪しがバンドの人気に関わる場合も多かったが、最近のバンドサウンドでは昔ほどギターが幅を利かせることもなくなってきている。
11月21日にミニアルバム「囚人のジレンマ」をリリースする 眩暈SIREN のサウンドを聴くと、ギター以上にベースというパートが、如何にバンドサウンドにとって重要で主体を持っているか理解してもらえるのではないだろうか。
眩暈SIRENにおけるラウドサウンドの形
眩暈SIRENは福岡で結成された5人組のロック・バンドである。
2012年より活動を開始し、まだインディーズな活動規模でありながらも2015年くらいからメキメキとファンが拡がっている新鋭のバンドだ。
そのサウンドは、とにかく音数の多いドラムと、しっかりリズムをキープしながらうねるベースが、その上に乗るピアノの旋律やディストーションギターと共に、日本語で日本人の情緒を歌い上げるボーカルをしっかりと支え、スケールの大きい眩暈SIRENならではの音を作り上げている。
ボーカルを務める京寺の作り上げる、amazarashiやTHE BACK HORNにも通じる、日本語が解る人に向けたメッセージ性の強い歌詞を、分厚く多彩なサウンドと共に心の奥に叩き込む眩暈SIRENのサウンドは確かに中毒性があり、その世界観にハマる人が増えているのもうなずける。
ジャパニーズ・ラウドの鍵をにぎるベースパート
2010年以降、国内のラウド系バンドシーンが盛り上がりを見せており、様々なスタイルでラウドなサウンドを聴かせるバンドが増えているが、ベースとドラムのテクニックレベルが格段に上がっているのが一つの特徴ではないだろうか。
一昔前のラウド系バンド、ジャパニーズ・ヘヴィメタルとして世界にその名を知らしめたバンドの多くは、ラウドネスの高崎晃やVowwowの山本恭司など、ボーカルと並びギターこそがバンドの花形であり持て囃されていたのだが、今や国内のラウド系サウンドを牽引するのはベースとドラムであるように思える。
そりゃ昔でも、ビリー・シーンみたいなギタリストの様に前に出て超絶技巧を魅せつけるベーシストは居たわけだが、眩暈SIRENのベース森田康介や「そこに鳴る」の藤原美咲の様に”あくまでもベースパートとして”リズムをキープし音の厚みを支える為に多彩なテクニックを魅せるベースの存在というのは、近頃のバンドの特徴なのではなかろうか?
ベースが作り上げる新しいヘヴィでラウドなサウンドとは
当然そういったベーシストを内包するバンドは、多彩なベースプレイにアンサンブルを合わせようとすればギターもドラムも自ずとラウドになり、楽曲自体はヘヴィメタル然としていなくてもラウドなバンドとして聴く人の耳に届くこととなる。
眩暈SIRENも「ヘヴィ・メタル」として括れるバンドではないが、そのサウンドは時に重厚で、歌われる詩の世界観も合わせて捉えれば十分にヘヴィでラウドなバンドであると言えるだろう。
ベースを主体としたラウドサウンドは、ボーカルと共存ができる点も大きな利点であると言える。従来のヘヴィ・メタルであれば、ギターがソロでフロントに出る時にはヴォーカルは引かなくてはならない。ボーカルとギターのソロが被ると歌詞は聞き取れないしギターのメロディーも聞こえないしで、何とも耳障りなものになってしまう。
しかし、あくまでもサウンドの土台を支えるプレイとして技巧を凝らすベースパートであれば、その上にボーカルが乗っていてもギターが乗っていても邪魔をすることはない。
新時代のジャパニーズ・ラウドに触れてみよう
こういったテクニカルなリズム隊が作り出すラウド・サウンドというのは、日本特有なものかもしれない。
80年代を彩ったジャパニーズ・ヘヴィメタルはアメリカでのメタル・ムーブメントの影響を強く受けたものであったし、それ以降も国内のラウドシーンは海外でのムーブメントが先行していた印象があるが、ここにきてジャパニーズ・ロックの成熟とともにラウド・シーンにも日本特有のサウンドが生まれつつあるように感じる。
そんなジャパニーズ・ラウドの新時代を感じさせる、眩暈SIRENの奏でる繊細で重厚なサウンドを、ぜひ一聴してもらいたい。
(ちょろっと@遊び人)
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